20110915  磯見輝夫学長殿    奥村昭雄


 

 

愛知県立芸術大学

      磯見輝夫 学長 殿

 

新築と改修              

 「古くなった建物を壊して新しい建物を建てる、ということはすばらしい」と誰でもワクワクする嬉しさを感じる。建てる土地もあり建てる予算もある、というのは羨ましい。

新しい建物は新しい歴史の始まりである。それが教育に関するものであれば、教育の内容も変化し新しくなることを意味している。

時代は社会的な常識の変化をもたらし、ものの考え方も変わってゆく。

そのような背景が、愛知芸大の建て替えの基本理念になっている。

では、新しい時代になって、どのような教育の内容が要望されているのか。その問に対するご意見をうかがいたい。

建物の形でいうと、新しい形、それは四角くて固くて重い。重さを和らげるには透明な物質を用い、自然界には無い感覚の立体を、突然あらわして緊張感をそそる。造られるのは、夏涼しく冬暖かく、高気密・高断熱で、高度な技術による仕掛けを持った、閉じた空間である。一歩屋外に出れば夏は暑く冬は寒く、害虫や野生動物もいる、危険な自然に取り囲まれているので、それは恐ろしくもあり、不便でもある。

教育の内容は、個性豊かで自由なルールの、自然と人間の交流を基盤としたものでありたい。しかし現代は、その前に、便利で快適な環境を欲している。そうでないと学生さん達がその学校を受験してくれない。それならば、そのような環境はなにも自然が豊かな山の中に作る必要はなく、都会の真ん中こそ適地である。愛知芸大の建て替え問題は、現在の校舎が山の中にあるために悲劇的な環境にあるという認識に基づいている。

いや、そうではない。「あの山の中こそが適地である」、と言うならば、どのような建物がふさわしいかと考えて建てられたのが、現在の愛知芸大である。教育の原点がそこにある。それなのに、直そうとは考えられない理由、はどこにあるのかうかがいたい。

これはひとり愛知芸大だけの問題ではないので、教育者としての責任あるご意見をうかがいたい。不躾な質問をお送りいたしますことをお許しください。

 

 

       2011年9月15日

                                奥村昭雄

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